№003 「エピソードⅢ」森高多美子

選手の話で、いちばん楽しいのは武勇伝だ。中でも三船選手のは、お気に入りのひとつだ。
 2003年のツールド北海道。この大会の常連、Iランチームのマナーの悪さにはみんな業を煮やしていた。逃げにのって先頭交替しないくらいならまだしも、NッポとSマノの“正調”主導権争いの列車の中に割り込もうと危険な横入りを繰り返していたのだ。それは、マナー違反というよりもはやルール違反ですらあったのだが、審判が注意をしてもどこ吹く風。一向に彼らの横行は収まらなかった。
 そこで、我等が“アニキ”三船雅彦が乗り出した。横風で集団が伸びたところで、ひとりIラン人をセイバイすべく彼らを追いかけた。強い横風の中、三船選手は黙々とペダルを踏んで前に上がる。そして、いよいよ、ヤツらの横に並んだとき・・・
・・・※○%?・・・とともに・・・&$#・・・を喰らわし・・・※@%*・・・
 これでやっと無法者は鳴りをひそめ、レースには平和が戻った。NッポとSマノも安心して勝負に専念できるようになった。しかし、それが三船選手のお陰であることはあまり知られていない。それ以来、Iラン人の間では「悪いことをすると黄色い服のオジちゃんが来ますよ」といわれているとか、いないとか・・・
 自転車界の重鎮にして、頼りになるアニキ。正義の見方・ライダーミフネは今日も行く。
(“放送中”お聞き苦しい点があったことをお詫び致します――筆者)

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プロフィール
森高 多美子(もりたか たみこ)
スポーツライター
ツールド北海道にテーマを得た『逃げる男』で
2004年 Numberスポーツノンフィクション新人賞受賞。
自転車のほかサッカー、野球でも執筆中。

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