№017 勝つことの難しさ

けいはんなサイクルレース


2006年3月21日 けいはんなサイクルレース(京都府精華町)
今年3戦目のレースとなるのは、俺にとっては地元のレースとも言える「けいはんなサイクルレース」。このレースは2年前までは秋に開催されており、今年からは会場をけいはんなのメインの通りである「精華大通り」に変わり、スタート&ゴールはランドマーク的な存在であるけいはんなプラザホテル前だ。
海外へ出かけるときは、このホテルの裏から出ているリムジンバスを利用することが多いので、レースとは関係ないが「この日海外へ旅立つ人はバスに乗れるのだろうか?空港に間に合うのだろうか?」と少し考えてしまった。

前回のレースでは優勝。そしてその前年度はチームメートだった中川が優勝と、ミヤタスバルレーシングチームにとってはチームプログラムには入っていないものの、相性の良いレースだ。なんとか優勝をしてチームにも早く優勝をプレゼントしたい。そんな思いでレースに挑んだ。

チームメートの西村は体調不良で不参加。そのため俺一人で戦わなければならない。これは俺にとってあまり好ましくない。ただでさえマークされているのに、一人だと徹底的にマークされるからだ。
この日、国内で新しく立ち上がったコンチネンタルチームである「マトリックス」が参加。安原さんをはじめ5名ほどがエントリーしている。それに立命館大学や現役競輪選手など、その他にも多くの侮れない選手達。そんな選手100人ほどと30キロ弱しかないレースの中で勝負し、そして自分でレースを完全に作り上げて勝利を得るために動かなくちゃいけない。これはかなり至難の業だ。しかしやるしかない。今俺の持っている能力でどうすれば一番勝ちに近い走りが出来るのか・・・

1周目で様子見的に登りでアタックする。ここですんなりと集団から離れ単独走。しばらくすると高校生ながらエントリーしている竹之内(立命館宇治高校)が合流。しかし集団もそう簡単には逃げさせてくれない。

最大およそ8%ほどの坂が、毎周回選手を苦しめた
その後も何度か逃げようとペースを上げにかかるが、とにかくマークされている。中盤で集団の中ほどに待機していると、予想ではもっと激しいアタックが始まり、もっと瀬戸際に追い込まれるかも、そのかわりすべての力を使って先行グループに追いつけば、集団内でマークしている選手は封じ込める、と考えていたものの、結果的には俺が動かないと集団内での動きもそれほど危険なものはなかった。

最終回を前に逃げを試みたが抜け出せず、多くの選手がマークしてくる中、最後の登りへ。ここで誰かが仕掛けるだろうと読んでいたがまったくなし。そんな時集団の先頭でペースアップ。ちょうど自分の2人ほど前だったが前の選手がまったく動くこともなく、そのまま集団の壁に埋もれてしまった。
アシストの選手がいれば最後まで引いてもらえるが、今回はすべて自分でやらなくちゃいけない。仕方なく単独で逃げる選手なので他のチーム、マトリックス立命館大学始め他の大学生、そして実業団登録のチームの動きをチェックするが、まったく動く気配がない。そして5秒以上は慣れた状態でラスト500mへ。
俺は少し前が詰まりそうになりながらも(特に大学生らは、こういう混戦を走り慣れてないので、横の動きが出やすい。だから隙間があるからと下手に突っ込むと無理やりフタをしてきて、フタをされた者もした者も痛い食う宇宙遊泳をするハメになることがある)ギリギリのラインを見つけて瞬間的に脱出。そして残り距離を測りながらスプリント開始。
このコースは下りゴールなので、一瞬でもスピードが死んでしまうと後ろの選手達に瞬時に抜かれていくことになる。下りゴールはすべてにおいてリスキーだ。俺は前の逃げる選手を追いながら踏むものの、この日はトップが12Tしかなかったので全然イメージしていたよりも伸びることなく追いつけなかった。しかし集団では先頭でフィニッシュし2位。
(ちなみに最後のスプリントでのスピードは69.4キロまで出ていた)

時速70キロほどでのスプリント。先行してそのまま逃げきる。優勝した選手が右手に見える
優勝した選手までは1秒ほどの差。残念だが仕方がない。
まだ21歳の若い選手で、マトリックスのBチームだそうだ。最後の登りでアタックし、前を行く選手もそのままカウンターで置き去りにして単独で逃げ切った。素晴らしい勇気だと思う。
俺も単独で抜け出そうと試みたが、さすがに最後の2キロからは躊躇してしまった。1位と2位の差は「勇気の差」だったと思う。

残念ながら2位だったが、多くの選手に徹底マークされていたことを考えると仕方がない。まだシーズンは始まったばかり。それに心配していた左足首の痺れもそれほど気にならず、登りで重いギヤでアタックしてみたが大丈夫なようだった。最大出力でも1200W以上を記録し、まだまだ能力に衰えがないことに自分でも自信を持つことが出来た。