№035 ツール・ド・インドネシア第5ステージ

Stage 5 Solo-Madiun 108.9km
総合リーダー、山岳賞リーダー、スプリント賞リーダー、そしてチーム総合1位・・・すべての賞を確保している。
俺の考えはいつもネガティブから入っているかも知れない。
1チーム5人と言うことを考えると俺は少し「やりすぎ」じゃないかと言う思いがあった。
残りはまだ5ステージある。すべてを持っている以上取りようがない。裏を返せば失う一方だ。何が一番守らなければならないもので、何なら失ってもいいのか・・・
一番大事なのは個人総合優勝。福島弟のポイントは上手く立ち回れば何とか守れる可能性はある。俺のグリーンジャージは一番手元を離れる可能性が高い。それは別に構わない。俺のジャージを取りにきたんじゃない。今は福島のリーダーが最も大事だ。

今日は距離が100キロ強なので最初からコントロール。3人が集団から抜け出す。ジャイアントが2人、そしてデンマーク人が1人だ。
ジャイアントの一人は昨日リタイヤしていて、救済ルールのため出走。さすがに疲労度の少ない選手が牽引するのだから追う方はきつい。
デンマークの選手が一番総合上位。明日からの2日間180キロが続く。俺はこのままコントロールしていくのは厳しいので総合を考えると一度デンマークにリーダーを渡すなりし、登りで攻撃すればいつでも福島なら取り戻せるのでどうだろう?と思ったが、福島はあくまでこのまま近トールしていく方針。ツール・ド・リムザンでも総合6位と、現在日本人でもっともステージの総合を狙うことが出来る選手だし、そして今一番総合を狙うすべを知っているはずだ。
彼の素晴らしいところは、勝負勘が優れているというか、「ここ」と言うときの思い切りの良さだろう。一緒に行動していると俺なんかよりも勝負師だなぁと感じることが多い。
ここは福島の考える理想のレースの流れで進めるのが良いと判断、彼の言う理想の展開を作るよう、俺は先頭を引く。

前の選手のペースは加速していく。中間地点で5分を越える。このままいくとリーダーは守れるだろう。俺たちは4人で集団をリード。そして後半に入って、総攻撃を喰らい始める。
俺は少し体調が悪いのか徐々に遅れ始める。遅れるたびに前に上がり、できる限り前でサポート。そして後半は集団の頭を取りたいコウデントソフのグリーンフィールドが集団をコントロール。俺はそのまま集団の後方でゴールした。

ゴール後、昨日リタイヤしたエルダー(ジャイアント)が前のグループで「機関車」をしていたことで少なからず物議を醸し出す。
今大会でリタイヤしても翌日スタートできると言うことになったのは、インドネシア人が大量にリタイヤし、そのため最終日のバリ島までに集団がコンパクト化しすぎることで、見栄えが悪くなることも危惧されてのことのようだ。だがそのルールを逆手にとって、リタイヤして機関車に徹することなどは想定外のことだったらしい。そのことで急きょ翌日から一度でもリタイヤすると出走できない普通のレギュレーションに戻すことに決定した。

明日のレースは最後の厳しい山岳コース。ここが勝負どころ。そして翌日にも180キロのステージが待ち構えている。
ここまででも十分俺は体が消耗している、何かおかしい事に気づき始めていた。やたらと塩っぱいものが食べたい、そして疲労感がきつく部屋に戻っても何もしたくない状態が続く・・・
そして次の日の朝、悪夢が始まった。

区間成績
1位 ニールセン
2位 ギャランガー +同タイム
3位 エルラー   +1分31秒 
6位 飯島 +4分54秒
43位 福島兄 +4分54秒
53位 三船雅彦 +4分54秒
65位 廣瀬 +4分54秒
70位 福島弟 +4分54秒

総合成績
1位 福島兄
2位 マッキャン +55秒
3位 ロイド +1分5秒
9位 飯島 +4分59秒
12位 廣瀬 +7分35秒
35位 福島弟 +30分13秒
38位 三船雅彦 +32分55秒

山岳賞
1位 福島弟
スプリント賞
1位 三船雅彦