№036 ツール・ド・インドネシア第6ステージ

Stage6 Madiun-malang 183.6km
第6ステージは序盤こそ平坦だが、後半は厳しい登りが待ち構えている。後半までどうやってレースを動かしていくのか・・・他チームからの総攻撃は必至である。

朝食を食べようとレストランに入った瞬間、香辛料の香りで俺はいきなり倒れそうになり、そしてまったく食事を受け付けなかった。足が地に張り付いていない。俺はまったく食事を食べられないままスタートの準備をする。疲れているのか?
俺だけじゃなかった。
福島兄弟は昨夜から激しい下痢に襲われ、既に救急車内で点滴を受けている。聞くところによると、昨夜から救急車は既に何人も病院に運んだらしい。一体何があったのか・・・食あたりか?
昨日まで一緒に戦ってきたデンマーク人も着替えていない。俺も限界に達しすぐに点滴をお願いするが、スタート時間が迫りすぎて何も出来ないままスタートする。

それは悪夢だった。集団の後方で千切れないように走るのが精一杯。俺は前方で頑張るチームメートをただただ見ていることしか出来なかった。そのうちその視点も合わなくなっていく。
激しいアタック合戦だった。俺は常に一列の集団のほぼ最後尾。いつ後方に飛んでいってもおかしくない。もうそこからどれだけ走ったのかも記憶にない。
ふと前に目をやると、ジャイアントの選手全員、ほぼすべての主要選手を含む28人ほどの先頭グループが形成されている。日本チームからは飯島のみが入り、福島兄弟は俺と同じ集団に取り残されている。なんとイエロージャージ、山岳賞、スプリント賞すべてが集団に取り残されると言う結果になってしまった。
もう何をしようと気力も残っていない。ただペースが落ちて、今日は無事にゴールしたいという気持ちしかない。後半に訪れる山岳コースを越えることができれば明日に繋がり、明日になればもしかすると「奇跡」があるのかもしれない。今はそれを信じて走るしか出来ない。

山岳コースに入る時点で福島兄に体調を聞く。もし追う気がないなら、ペースダウンをするように集団内に諭し、攻撃をなくしてもらいみんなでゴールするように話をすることを伝える。
リーダーを失っても走ってさえいれば区間賞、そしてそれ以外の「何か」を得ることは十分可能だからだ。だから俺も苦しみながらも走り続けている。
福島の答えは別にこのペースでいいとのこと。別に切れるほどじゃないとの返答だった。

前の集団も登りでまとまっていく可能性はゼロだ。必ずバラける。そう読んだ廣瀬は若干体調に余裕があるのか集団の先頭でペースアップしていく。この峠は勾配は緩いがおよそ40キロ登り続ける。俺は体に力が入らず3キロほど登ったところでそのまま集団から離脱してしまった・・・

脱落した後、福島兄弟に抜かれていないことに気づく。
俺は待つ余裕もない。何があったのか?3人ほどのグループに喰らいつき、適当なところで後方を待とうと振り向くがまったく姿が見えない。そして三浦監督の乗るチームカーがやってきて、そのままのペースで走り続けろと指示が出る。
俺は朝に点滴をすることも出来ず、常に自分の限界ゾーンに突入しないように走ってきた。しかし彼らは点滴をして少し回復したことで、かなりアグレッシブだった。体調の違いを見せ付けられて俺は完全にノックアウトされた。
だが現実はそのことが福島兄弟に対しては裏目に出たのだろうか・・・

前からこぼれてきた選手、後ろから追いついてきた選手およそ15人ほど。そのグループ内で突然やってくる悪寒や激痛を凌ぎながら峠を頂上を越えた。
体温がまったく上がらない。下り始めるとすぐに全身鳥肌が立つ。コーナーでもバイクコントロールができない。今はただ我慢してゴールラインを超えるしかない・・・
一体どれだけの時間をバイク上で過ごしたのか記憶にない。ゴールラインを超えた。その事実は覚えている。
ゴールすると飯島が2位でゴールしたとのこと。それも途中から急に体調が急変し、嘔吐しながらのゴール。そのまま救急車に担ぎこまれ点滴、そして酸素吸入されているらしい。
福島兄弟はゴールすることなく救急車で病院へ。

俺はホテルに着くなり悪寒が始まり、そのまま病院に運び込まれ、そのまま点滴が始まった・・・

区間成績
1位 ジャムスラン(グリーンフィールド・フレッシュミルク)
2位 飯島 同タイム
3位 マッキャン(ジャイアント) 同タイム
31位 廣瀬 +10分50秒
82位 三船雅彦 +31分25秒
福島晋一リタイヤ
福島康司リタイヤ

総合成績
1位 マッキャン(ジャイアント)
2位 ジャディシュキン(ポリゴン・スイートナイス) +2分30秒
3位 ロイド(ジャイアント) +2分43秒
4位 飯島 +4分02秒
13位 廣瀬 +17分34秒
46位 三船雅彦 +1時間2分59秒

ポイント賞
1位 コウデントソフ(グリーンフィールド・フレッシュミルク) 15ポイント
2位 三船雅彦 11ポイント

山岳賞
1位 スプレージ(ビンタン・クランッガンサイクリングクラブ) 20ポイント
9位 飯島 3ポイント